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セリフの説明っぽさ - 「鬼滅の刃無限列車編」

9月25日(土)にテレビでやっていた「鬼滅の刃無限列車編」を見た。アニメはNETFLIXで見ていたし、友達に誘われて映画館にも見に行っていたけど、テレビでやるならもう一回見ようかな、という感じでまた見た。

最初に書いておくと、私はそこまで鬼滅の刃のファンじゃない(だからと言ってアンチでもないと思う。アニメも映画も見たし、煉獄さんの生き様はかっこよかった)。ファンになる前に流行りすぎてしまったという要素もなくはないけれど、なーんか気になるところがあるからだ。

「セリフの説明っぽさ」である。

 

本題に入る前にめっちゃ前置きをしておく。私は説明がたくさんある物語より説明のないエヴァみたいな物語が好きだ。実写映画でも、物語が分かりやすいよりは考察の余地が残されていたり、表情や仕草から感情を感じ取れるものが好きだ。セリフも長いよりさっぱりしていたほうが好みだ。情報が多いと分かりやすいけど、情報を詰め込まれてしまった気になる。「暗殺教室」の作者、松井優征先生がジャンプの漫画学校で話していたと思うのだが、彼はセリフを最低限に削るらしい。読者にストレスがないように、文章が長くなりすぎないように、言葉を変えたり必要のない言葉を削ったりして短くするのだと(すげー)。私は、情報が多すぎず少なすぎず、そういうのが好きなのだ。

そういうわけで、鬼滅の刃を見ているときに、どーーーーしてもセリフが気になってしまった。

鬼滅の刃では、キャラがとにかく喋る!!!!! これは映画だけじゃなくてアニメを見ているときにも気になっていた。セリフ長くね!?!?!?

多分、それが作品の良さでもあるんだろう。鬼滅の刃がその話のダークさ描写のグロさにも関わらず子どもたちに人気だったのは、説明による分かりやすさがあったのだと思う。実際、基本的に登場人物がどんな過去を背負っていてそのとき何を思っていてどういう風に現在に繋がっているのかということはたいてい本人によって語られている(と私は感じた)。炭治郎はとっても素直でまっすぐな志を持った少年だし、彼の仲間である善逸や伊之助についても「裏がある」人間ではないと言える。思ったことは口に出すし、考え方も非常にすっきりしている。セリフが長くて解説っぽいのも、炭治郎やキャラのまっすぐさであったり真面目さを描写してるのだと言われればまあ納得もできる。

でも私にはそれが物足りなく感じる!! いや逆に物足りすぎてるのか!?!?

 

映画でこの説明口調が気になるなと特に思ったシーンはこちら。

・魘夢が死ぬ直前で「アイツが強すぎた」「アイツがいなければ」と全員に対しての恨みつらみを独白するシーン

→一人ひとりへのコメントが長い上に全員分への恨みがあるので死ぬ直前に貴重な体力を使って自分の敗因を解説するマンになっている。逆にもう面白くなってしまっている気がするけど……。みんなそれぞれの強さがあっていいよねって感じはあるのだけれど、この敗因解説のせいですっげー魘夢がザコい。まあ後に上弦出てくるしね。それに比べたらザコくても仕方ないか……(?)。

・煉獄さんと猗窩座の戦いを見ている炭治郎と伊之助

→炭治郎は「傷のせいもあるだろうがヒノカミ神楽を使うとこうなる……!」、伊之助は「助太刀に入ったら足手まといにしかならないのが分かるから動けねえ!」と言って煉獄への助太刀ができない。このセリフだけ抜き出すとそうでもないけど特に伊之助のセリフが長い。短くしようと思えば「速すぎる!俺が行っても足手まといにしかならねえ!」で事足りるのだが、「隙がねえ入れねえ動きの速さについていけねえ(中略)分かるから動けねえ!」なので心情というより説明のためのセリフだと感じてしまう。

 

異次元を描く上で、解説役が必要になってしまうのは仕方のないことだと思う。ギャグマンガだと、あるキャラが解説役にふりきっちゃってもそれがネタになるし、メタ発言も許容される(「逃げ上手の若君」での犬追物回でも解説役が解説役として紹介されていたし、「斉木楠雄のψ難」ではいつまで経っても学年が上がらない現象についての話があった)。だが、バトルものでは解説役が解説役として存在すると、なんか不思議な感じになってしまう。鬼滅の刃で「なんか説明っぽい」と私が感じてしまったのは、そういう「解説役」になってしまっているシーンがあるからなのかなと思う(それが悪いっていうわけではない。話は分かりやすいし、展開もスムーズだし、読者の解釈と乖離してしまうことも少ないだろうし)。

絵や映像や展開から既に読み取ってしまっていることをキャラにもう一度説明されるのが苦手なのかもしれない。いや、単純に説明っぽさのあるセリフ回しが気になるだけ? 独白に心情っぽさがないのが気になるのかな? 小説に慣れすぎていて、場面転換がないのに各キャラでの一人称独白が入るのが気になる? ダークな雰囲気、重い展開、グロい描写という大人向け設定と「セリフによる説明」の分かりやすさがちぐはぐに感じてしまうのもあるかも。いや、もうわからん。わかりません。

 

そういうわけで、私はものすごくハマる!という感じではなかった。でも流行る理由もすごくわかる。何度も言うけどわかりやすいし。

(まあ所詮漫画を数シリーズ集めてるくらいのゆるオタクの戯言なんですがね……)