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ドラマ「アンナチュラル」と「Lemon」を今更語る

いや〜みましたよ、アンナチュラル!(今更)

最高に良かった!!!!! カルテット並みに面白かったですね…… 時期が悪かったのでずっと録画してリアルタイムで観てなかったけどほんとリアルタイムで観たかった、これは…。

 

と、いうことで、全話見たのでアンナチュラルと主題歌「Lemon」について語ります。

 

米津玄師さんはもともと動画投稿サイトでボーカロイド曲を製作していた方。自分はその頃から結構好きだったけど、この主題歌「Lemon」を聞いたときはほんっっとに感動した。この世のすべての悲しみと苦しみとうつくしさが詰まったみたいな歌詞で、ドラマを見てなくても感動する。MVも、詳細なストーリーがあるわけじゃないけど映像の細かいところから踊る女性がもうこの世にはいないであろうこと、そして米津さんは彼女を祈っているであろうことが分かる。2人が履く同じハイヒール、「今でもあなたはわたしの光」というフレーズ、ベンチに置かれた花。胸が詰まる。

「言えずに隠してた昏い過去もあなたがいなきゃ永遠に昏いまま」って歌詞は、自分の昏い過去を話し得る相手はあなたしかいないってことで、だから「あなたがいなきゃ永遠に昏いまま」なんだろう。「あなた」は「わたし」の心に深く消えない悲しみと傷を刻み込んだのだろうし、そのことからもう随分経つにもかかわらず「わたし」は「未だにあなたのことを夢に見る」。ひとは所詮他人で、だれかが何を考えているか何をしているかなんて完璧には知り得ない。でも、だからこそというべきか、ひとは誰かを愛することができて、同じ人間にはなれないから大事にできるんだろうなあ。

 

そして本題は「アンナチュラル」である。ネタバレめっちゃするので見てないひとは何のことだかわからないと思うけどとりあえず書きます

 

 

解剖医の2人、三澄ミコトと中堂系は過去に「死」に接近したことがある2人だ。ミコトは一家無理心中という"身勝手な殺人"に巻き込まれ、幼いころ家族を亡くしている。1人生き残ったミコトは「生かされた」のではなく「生き残ってしまった」。中堂系は愛する恋人の死を、彼女が運びこまれた解剖の場で知り、それからずっと彼女を殺した犯人を探している。クソクソ言いながら彼は彼女の頬に残された赤い金魚という唯一の手がかりをもとに、ほかに赤い金魚を持つご遺体を探し、そして、最後には恋人を殺した犯人を殺すつもりでいる。

ひとは死ぬ。いつか死ぬけれど、だからといってだれかの愛する人が積極的に死に向かっていいわけがないし、死後に非難されたり、ないがしろにされたりしていいわけがない。「不条理な死」が許されていいわけがない。

もちろん中堂系の復讐とも呼ぶべき計画は法的に許されることじゃないのは当たり前だ。つーか法的にもそうだし、復讐が何も利益を生まないことなんて彼も知っているんじゃないだろうか。第5話で鈴木さんが犯人を刺すのを止めなかった中堂系は、きっと頭の中で恋人を殺した顔も知らない犯人を刺した。そしてそれは胸糞悪かったはず。それでも彼は最終話までずっと犯人に復讐をするために生きていた。法や理性じゃ止められない感情があるのは確かだと思う。

「死」というのはアンナチュラルの大きなテーマだ。けどアンナチュラルって本当にすごくて1話ごとに現代社会の闇や問題を取り扱ってくる。事件現場や被害者遺族、加害者親族に押しかけるマス"ゴミ"のことも全話通して描かれているし、ネット、心中、過労、いじめ、テレビで取り扱ってもなんとなくコメンテーターに納得できない気がする問題に対して、視聴者が思っていることをバッサリとミコトが言ってくれる。かっこいい。中堂系の「許されるように生きろ」は痺れたなあ……。

というように、とにかく魅力が満載。すごい。

 

最後にアンナチュラル全体と中堂系を踏まえてLemonについてもう一度。

中堂系の恋人、夕希子の描いた絵本「茶色い小鳥」のストーリーでは、主人公と見られる茶色い小鳥は死んだあと花になる。中堂は理解できないようなそぶりを見せるが、夕希子は彼に言う。「理屈じゃないの」。

Lemonでは、亡くなったと見られる女性のいたベンチに、ラストで花が置かれている。

そこまで意識したのか分からないし、きっとLemonのMVの花は彼女自身ではなく献花なのだけれど、アンナチュラルを見てからMVを見て、中堂系と夕希子のことを思って号泣してしまった……。中堂系の心の中で、夕希子の姿があった場所には綺麗な花が咲いているんだろうなと思えるから切ない。

これもまた偶然なんだろうけど、アンナチュラル5話で鈴木さんが犯人を刺したあと、中堂は雪の中、片手で顔を隠して佇んでいる。その姿はLemonのMVの最初で踊る女性の姿とも重なる。

何が言いたいかってとにかくLemonが中堂系に合いすぎる。

「今でもあなたはわたしの光」というフレーズは、長い時を感じさせる最高の言葉だ。MVで米津さんの演じる男が女性を想っていた(?)ように、中堂にとって夕希子は光だ。そして、MVで米津さんと向かい合った女性が眩しそうに手の甲で目を隠すのは、彼女にとって向かい合う彼が光だったからだと思う。そしてそれは、夕希子にとって中堂が光だったと言っているように見えて、切なくも綺麗。

 

 

言いたいことがまとまらなかったけどとにかく!アンナチュラルとLemonの組み合わせが最高でした!!!いいドラマでしたマジで!!窪田正孝のことほとんど書かなかったけど窪田正孝めっっっっっちゃかっこよかったです死んだ。石原さとみもすっごくかわいかったしかっこよかったです。市川実日子も羊の木とまた違って明るくて最高だった。中堂系を演じた井浦新は言わずもがな。ひとの死を扱ったドラマで、こんなにグッときたドラマはない……ってほどでした。いいドラマをありがとうTBS……。