未来圏内

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「君の名前で僕を呼んで」という最高に刺さる映画

最高に刺さりました!!!!!!!!!!

 

これは刺さる。刺さって抜けないからずっと傷になっている。ああ……ってさっきからずっと言っている。

 

いやまずタイトルがすごい。君の名前で僕を呼んで。劇中ではこのセリフにこう続くわけです。――「君の名前で僕を呼んで。僕の名前で君を呼ぶ」。

二人はお互いを自分の名前で呼ぶんですよ。それがなんとかわいらしくて切実で、うつくしくて儚い恋か……ああ。とりあえずはネタバレなしで感想を書きます。

 

主人公はエリオという17歳の青年。彼はイタリアに住んでいて、大学教授の父の助手であるアメリカの院生のオリヴァーと出会い、夏を一緒に過ごすことになる。はじめは自信家なオリヴァーに対して少し反発しているエリオだが、日々を過ごすうちに彼に惹かれていき、オリヴァーもまた、賢く繊細なオリヴァーに惹かれていく。だが、日々を重ねれば重ねるほど、オリヴァーがアメリカへ帰る日は近づき……。

 

というのがあらすじ。私の勝手な印象からすると、エリオはとても繊細で、いろいろなことにちょっとずつ臆病だ。そしてオリヴァーは反対に自信家で、エリオと比べると横柄に見える。エリオの視点から見るとオリヴァーの印象はあまりよくない。でも、二人は一緒に出かけたり、エリオの弾くピアノを聞いたり、夜遊びをするうちにどんどん近づいていく。その過程がたまらない。エリオの言葉がどんどん恋文のように読めてくる。オリヴァーの言葉はそれをはぐらかしているようにも見える。とかやっている間に二人は、友情とも恋ともとれるような感情で互いを想っている。

なにがすごいって、エリオ役のティモシー・シャラメの演技!!!!!!!!そして二人のうつくしさ!!!!!!!

エリオの表情やセリフ(そしてその言い方)、指先、口元、視線、すべてがすごい。あんなに複雑な表情を人間はできるのか……と感動した。笑顔はすごくかわいくて、後半、オリヴァーを見つめる目は熱っぽくて素敵だ。涙がとても綺麗で、もうなんていうか、すごいの一言に尽きる。予告にもあるけれど、オリヴァーが女の子たちと踊っているのを見つめる彼の目や表情は、もうなんだか苦しくなるほどうつくしい。息が詰まる。胸が詰まる。エンディングの彼の演技だけでもこの映画には価値がある。

そして二人のうつくしさ!!!!!!!彼らは劇中でほとんど半袖か上裸なんだけれども、まず体がすごくきれいでかっこいい。何もかもうつくしい。キスシーンとかベッドでのシーンとか、息どころか時が止まる。いやほんとうに。

とにっかく、うつくしくてめちゃくちゃグッとくる映画だった。男同士とかそういうことじゃなくて、そんなことはもう関係なくて、ただただ「初恋」なのだ。初恋の映画なのだ。もちろん男同士であることが彼らの恋のネックにはなっているのだけれども、でも、それでも、やっぱりこの映画は夏の初恋。涙が勝手に出てきて、今もまだ、この映画から立ち直れていない。最高に刺さる。

 

 

 

 

そして、ここからは私の記録なので、めちゃくちゃネタバレありで書きます。解釈とかときめきで死んだところとかいっぱい書いてあるので、読みたくない方は読まずにどうぞ。

 

 

 

 

泣いた。エンドロールでエリオが泣いているのを見て、その演技力に驚きながらも、エリオの恋の終わりに泣いてしまった。とにかく、ティモシー・シャラメの演技がすごい。wiki見たら続編作るっぽいけどどうなるんだろう。続編が出るなら必ず見に行く。

最初、オリヴァーはプライベートゾーンが狭くて誰にでも距離感のない人なんだと思った。彼はすぐにエリオに触るし、肩に触れて、背中を叩いて、ちょっと横柄にさえ見える。でも、それが彼のアプローチなんだよね、きっと。エリオはそれを最初は嫌がっていたけど、どこからだろう、何か決定的なことがあったわけじゃなくて、彼に惹かれていく。予告にもあったシーン、「君に知らないことはある?」「大事なことは知らないんだ」「大事なことって?」「分かってるだろ」。あそこはすごくどきどきした。駆け引きに見えた。私は外国映画をあまり見ないから、ああいう会話を読み解くのが苦手で、会話の真意がわからない。あのシーンも、私にはちょっと難しかった。でも、駆け引きに見えたのだ。ねえ、僕の気持ちどこまで知ってるの? 僕はどこまであなたに告白していいの? どうやって告白すればいいの? あなたは? あなたには、僕がどう見えてるの? エリオはとても繊細で言葉を選ぶ人だ。臆病で、核心に触れられない。それに気づいていつつ、オリヴァーも言わない。言わないから少しすれ違う。エリオは彼がセックス「してくれた」と思っている。オリヴァーはエリオに対して「初心な子を苦しめた」と思っている。それで、あれ(アレ)をしたアプリコットを食べようとする事件があって、エリオはすっごく抵抗するのだ。だって、あなたは僕の恋心をわかっててこんなことをするんでしょう、あなたは僕のこと好きじゃないのに。みたいな。いや違ったらごめん少なくとも私にはそう見えたの。

あのダビデの星のネックレスもめちゃくちゃ印象的でしたね。鼻血事件のあとから彼はあのネックレスをするようになる。オリヴァーもしているから。もっと言うと、鼻血事件のときに「そばにいてほしい」と言うのもぐっときた。ときめきがあふれた。

エリオはとてもうつくしい。まだ17歳で、こどもで、でもすごく大人びていて、とにかくうつくしい。儚い。

あと映画見ててすっごくハエ!!!ハエがきになる!!!!!!馬鹿だからハエが出てくるシーン忘れちゃったけどあれってなんの暗喩なの。もう一回見直したい。

そういえば音楽も最高だった。エリオの弾くピアノ、バックのピアノ曲、挿入歌、なんか胸にくるよね。綺麗な曲だった。

お父さんの言葉もすごくよかった。というかあそこのせいで号泣。そうだ、感情を殺してはいけない。人間は心を殺してしまっては、すべてが終わりだ。つらいことがあっても悲しいことがあっても心を殺すのはダメ。だってそれは喜びまで消してしまうことになる。エリオの家族は寛容で、とてもやさしい。お父さんはとても聡明だ。エリオの幸運はオリヴァーと出会ったことと、オリヴァーとの出会いを否定しなかった家族なのかもしれない。

そしてなんといっても「君の名前で僕を呼んで」だ。君の名前で僕を呼んで。僕の名前で君を呼ぶ。エリオがオリヴァーに向かって「エリオ」と呼ぶ。オリヴァーはエリオを見つめて「オリヴァー」と呼ぶ。これだけの行為にすごく恋の切実さを感じませんか。感じる(自問自答)。相手を願っている。祈っていると言ってもいいかもしれない。相手が自分のものであればいい。髪の毛から足の爪まですべて残らず、うつくしい声も、その視線も、果ては名前まで。それは彼らの恋の合言葉で、愛の告白でもあるんだろう。二人が名前を呼びあうのは、「恋」なのだ。恋じゃないとこんなことってできない。それで、ラストにつながる。

オリヴァーがアメリカへ帰って、季節は冬になる。あの町では「誰もが夏の終わりを待っていて」、「冬は感謝祭などをする」と言っていた。二人は夏の終わりなんて待っていなかったけれども。いや、それは置いておいて、とにかく冬、冬だ。エリオの家族はハヌカの祭りの準備をしている。そこに電話がかかってくる。オリヴァーだ。エリオは冗談交じりに「結婚の知らせかな」と言う。これには、恐る恐るという気持ちもあったんだろうなあ。まさか、そんなわけ、って思っていたんだろう。でもオリヴァーはそれを肯定する。呆然とするエリオと、その間に電話を替わる両親。両親はオリヴァーの結婚の知らせを聞いて祝福するけれど、電話を終えたあと、顔を見合わせる。息子の恋が終わってしまったことを知ったから。一方エリオはなんとか立て直して、おめでとうと言う。エリオが電話に向かって「エリオ?」と声をかけるシーン、せつない。そこから「エリオ、エリオエリオエリオ……」と彼はオリヴァーを呼び続ける。だって、それがオリヴァーとの恋の合言葉だから。沈黙のあと、オリヴァーはエリオに「オリヴァー」と言葉を返す。愛の告白にも似た名前の呼びあい。でも、彼は言うのだ。「何一つ忘れない」。これがまた!!!!罪深い!!!!!なんだよ忘れないって。「忘れない」というのは、「忘れる」ことが前提にあるときに出る言葉だ。そして忘れるっていうのは、「過去になったもの」のことにしか使わない。と、私は思う。だから、たぶん、オリヴァーは無理やり終わらせようとしたんだろうな。まだ心は恋をしているけれども、自分は結婚をするから。もう「過去」だという区切りっていうか、うまく言えないけど、そう感じた。これ、あまりに傷を負って英語を聞いてなかったけど、英語だと何と言ったんだろう。rememberみたいな単語だったら、ちょっと前向きだけど、never forgetみたいな文だったら、「終わり」が前提になっている気がする。このセリフ、罪深い。

エリオは電話を切ったあと、暖炉(?)の火の前で静かに泣き始める。そしてエンドロールが流れる。この間のエリオの表情!!!!どんどん目に涙が溜まっていって、こらえきれなくて涙が落ちるシーン。すごい。んでしかも、エンドロールが止まって、最後のシーンが、エリオの後ろから彼に声がかかるシーン。母親だったか誰が声かけたか忘れたけど、とにかく、誰かが彼のことを呼ぶのだ。「エリオ?」と。

この最後のセリフって、すごい。オリヴァーの前で、エリオは「オリヴァー」だった。恋。電話でも、二人は互いを自分の名前で呼ぶ。でも、最後の最後で、エリオは彼自身の名前を呼ばれてしまう。それって、なんか、恋の終わりを感じる。恋が終わってしまって、エリオはエリオに戻った。もしかしたらもう、彼は「オリヴァー」にはなれないかもしれないし、その名前を呼ぶことも聞くこともないかもしれないと思ったら、もう、無理。泣く。書いてて泣けてきた。やめる。終わりにする。

 

そういうわけで、とにかく刺さった映画、「君の名前で僕を呼んで」。Call Me By Your Name. もう一回見たい。